オンライン試験にAI監視システムを導入するメリット

オンライン試験は、コロナ禍以降さまざまな試験で採用されました。そのメリットは、試験会場を用意しなくてもいい点や、受験者が試験を受けやすい点にあります。しかし、オンライン試験はその性質上、不正の防止が従来の試験よりも難しいです。そこで注目されているのが、AI監視システムです。

オンライン試験もメリットと現状抱えている問題

まずは、オンライン試験が必要とされる背景や現状抱えている課題についてみていきましょう。

オンライン試験のメリット

近年、試験の実施方法としてオンライン方式が急速に広がりつつあります。従来は、指定された日時に受験票を持参して会場に足を運び、地方在住者にとっては交通費や宿泊費を負担して受験するのが当たり前でした。

しかし、インターネット環境さえ整っていれば自宅や任意の場所から受験できるオンライン試験の普及により、こうした不便さは大きく解消されつつあります。この仕組みは受験者にとって受験の機会を広げるだけでなく、主催者にとってもメリットが大きいものです。

例えば、地方や国外に住む受験希望者も取りこぼすことなく試験に参加できるため、より広範囲から人材を発掘できるようになります。また、答案を自動的に採点する仕組みを導入できれば、採点作業の効率化やミスの防止につながる点も見逃せません。

オンライン試験の課題

しかしながら、オンライン試験は万能ではなく、新たな課題も浮き彫りになっています。その代表的な問題が、不正行為の増加です。会場試験と異なり、受験者のすぐそばに監督者がいない状況では、監視が手薄になりやすいという弱点があります。

具体的な不正行為としては、紙に答えを書き写す古典的なカンニングから、試験中にパソコンの別タブを開いてインターネット検索を行う方法まで多様です。さらに、試験画面を外部の人と共有し、イヤホンを通じて解答を教えてもらうといった巧妙な手口も確認されています。

いずれもWebカメラによる監視下で発生しており「目の前に監視員がいない」という安心感が受験者の心理に働いていると考えられます。その結果、実際の会場試験に比べるとオンライン試験では不正を見抜く難易度が高く、公平性をいかに担保するかが大きな課題となっているのです。

オンライン試験の不正防止にAI監視システムを採用するメリット

オンライン試験の普及に伴い、公平性を保つための監視体制が重要視されています。従来はWebカメラを通じて人間の監視員が受験者を見守る方法が採られてきましたが、受験者数が増加すると監視員の確保や長時間にわたる集中維持が難しくなるという課題が浮上しました。そこで近年注目されているのが、AIを活用した監視システムの導入です。

AI監視システムの強み

AI監視システムの最大の強みは、不正行為を自動で感知・検出できる点にあります。

AIは多様な機能を持たせることが可能であり、例えば受験者の周囲に不正に使用される物体がないかを確認する「物体検知AI」、試験中に別タブを開いてカンニングを行う行為を防ぐ「画面認知AI」、さらには受験者の視線を追跡して不自然な挙動を見つけ出す「目線感知AI」などが代表例です。

これらの技術を組み合わせることで、監視員の数が限られていても試験の公平性を担保しやすくなり、従来の人的監視に依存した仕組みに比べて格段に精度が向上します。

替え玉受験・なりすましの対策にもつながる

さらに、オンライン試験で大きな問題となる「替え玉受験」や「なりすまし」への対策もAIが有効です。通常、本人確認は申し込み時の顔写真付き書類と受験前の画面照合で行われますが、人間の目視では限界があります。

その点、AIによる人物認証であれば、髪型や服装を変えて雰囲気を似せた場合でも、顔の輪郭や特徴を瞬時に分析し、本人かどうかを高精度に判定することが可能です。

AI監視システムの課題と解決策

AIを活用した監視システムは、オンライン試験の不正防止や公平性確保に大きな効果を発揮するものとして期待されています。しかし、その運用にはいくつかの課題が存在するのも事実です。

AIの精度に関する課題

とくに問題となるのはAIの精度です。AIは膨大な作業を同じ水準で繰り返すことに長けており、一定の条件下では人間以上の正確さを持っていますが、それはあくまでプログラムの範囲内に限られます。

学習機能を備えたAIであっても、人間のように微妙な挙動や表情の機微を判断するには限界があり、すべての監視を完全にAIに任せるのは現時点では難しいのが実情です。

この課題に対する有効な解決策のひとつが、人間の目との併用です。具体的には、試験中の様子を録画し、試験終了後に人間が映像を確認する方法が挙げられます。リアルタイムの監視はAIに任せつつ、後から人間が映像を二重チェックすることで、不正の見逃しを減らすことが可能となります。

録画データは何度でも見直せるため、リアルタイムで気づけなかった細かな不審行為も把握できる点が利点です。限られた人員でも効率的に監視体制を強化でき、AIの不完全さを補う現実的な手段といえます。

受験者への注意喚起も欠かせない

また、AI監視システムの効果を高めるためには、受験者への事前の注意喚起も重要です。

たとえば「試験はAIで監視されています」「録画を行い、終了後もチェックします」「不正が発覚した場合は合格を取り消します」といった通知を行うことで、受験者に心理的な抑制を与えることができます。

この「監視されている」という意識が働くことで、不正を未然に防ぐ効果が期待できるのです。

まとめ

オンライン試験は、自宅や任意の場所で受験できる利便性があり、地方や海外在住者も受験機会を広げられる点で大きなメリットがあります。しかし、会場試験と異なり監督者が近くにいないため、紙への書き写しや別タブ利用、他者との画面共有など多様な不正行為が発生しやすく、公平性の確保が課題です。そこで注目されるのがAI監視システムです。物体検知、画面認知、目線追跡などのAI技術を組み合わせることで、人的監視だけでは難しい不正行為や替え玉受験・なりすましを高精度で検出できます。さらに、録画による後チェックや受験者への事前通知を組み合わせることで、限られた人員でも効率的かつ公平な監視体制を実現可能です。オンライン試験の利便性を損なわずに、公平性と信頼性を高める革新的な仕組みとして、AI監視の導入は今後ますます重要になるといえるでしょう